記事一覧

たけやだよりVOL.27 その1

<終の棲家>
 クモの嫌いな人にはちょっと申し訳ありませんが、昨年の暮れ近くに、いつもBGMを流しているラジカセの棚の、ちょうど下のところに一匹の小さなクモが居座りました。
彼(?)は身じろぎもせずそこに居て、追い払おうとしても動かず、生きているのか死んでいるのか判らないので、ちょっと脚に触ると、ゆっくり手足を動かしたりするので、生存を確認したりしていたわけですが、もう死期が近いのかもしれないし、きっと穴澤君のヴァイオリンを聴きたいのだろうと、又、店主とも「ここを終の棲家と決めているんだろう」などと話し、そのまま見守ることにしました。
<旅立ち>
 毎日彼を見るたびに、少しづつ弱っていった母のことが思い出されて、生きものはすべて同じだなぁなどと感傷に浸ったりしていると、いよいよ穴澤君のヴァイオリンが心に沁みて、癒されてゆくようでした。やがて暮れも押し迫った頃、ふと目をやると、前日とは異なり、力なく伸びた足。もう魂が抜け出してカラだけになった「物」がそこにありました。
「もう いないんだ」と思いつつも、そこから取り除くことがはばかられて、やはり、居なくなった彼を偲びながら仕事をしていました。
「いのち」を深く刻む出来事のひとつでした。



  
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たけやだよりVOL.26  その5

<終わりに>
 もうかれこれ三十年ほどになりますか、店主の糖尿病との長いお付き合いです。若年性糖尿病といわれ、あれやこれやと、身体に良いと聞けば試し、その結果に一喜一憂の日々を経て、年齢と共にあっちこっちにガタが来て、「ナンデこんなに頑張っているのに良くならないんだ!」と天に向かって唾したり、「もうこのままか~」と諦めに縛られたり・・・
傍に居てもなかなかお世話できない私は、いよいよ自分を責めて・・・
ところがです!
ようやく巡り会いました。店主の身体にぴったりとはまったんですね。
新しい食事療法は私にとってはとても楽で楽しいものになりました。何よりも糖尿病のコントロールがうまくいき、店主の明るく、さわやかな姿は、家族をはじめ周囲の喜び以外の何ものでもありません。
 先日、コスモスウォーキングに二人で初参加しました。私達はノルデックウォーキングをしているのですが、約七キロを完歩しました。もちろん最後尾を飾りましたけどね~。最後の坂道がきつかったので二回程やすみましたから。
でもですね、考えられないことです。ほんの二ヶ月前まで身体がきつくて横になることが多かった店主ですからね。今では顔色が良くなったって会う人ごとに言われ、店にも頑張って出ています。
それまできつい身体に縛られて、苦虫を噛み潰したような顔をしていた店主ですが、明るくなったと、お客様がおっしゃって下さいます。
これまで皆様からかけていただいたご厚情に少しでもお応えし、ご恩返しをしたいと張り切っています。どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます。



  
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たけやだよりVOL.26  その4

<ホームページ>
 たけやのホームページが新しくなりました。
様々にお問い合わせを頂きますので、地図等も見やすく、また、料理人のブログも登場し、たけやの動き等もリアルタイムでお届けできるようになりました。
ヤフーでの検索は「銘酒たけや」でも大丈夫でしたよ。
<今年のおせち料理>
 今年のおせちはお客様のご要望にお応えして、これまでの五名さま用の他に、二名さま用の二種類をご準備いたします。

五名さま用   三万円
二名さま用  一万四千円

三万円のおせちは三十個、一万四千円のおせちは二十個ご用意させていただきます。
尚、この金額には箱代として、それぞれ
二千円が含まれていますので、次回この箱をお持ちくださいますと、二千円を引かせていただき、お料理を詰めさせていただきます。

 もうそろそろ昨年の「マイ箱」をお預かりする頃になりました。もちろん、今年も年明け早々に、おせちの箱をお預かりしているお宅もあるんですよ~

<たけや十年目>
 この十月で、天神のたけやは十年目を迎えることができました。本当にあっという間の年月でしたが皆さまとの出会いの記憶、思い出は数限りなく生き生きと心の中にあります。
十月という月は私共にとって大切な月です。たけやを開いたのもこの月なら、博多のたけやを閉じたのもこの月です。お陰様を心に刻み、新たな一歩をこれより踏み出します。



  
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たけやだよりVOL.26  その3

<灯を消して>
 友人の実家に到着すると、お姉さま方もいらして「せっかくなんだから外でやりましょう。その方がロマンチックだわよ」とおっしゃり「蚊なんていないでしょう」と、早速行動を起こそうとされたのですが「蚊はどうでもいいけど、イノシシが出て来ていたからおよしなさい」のお母様の一言で、素敵な計画は中止になりました。
お月様は見えないけど、ほのかな明かりの中で聴きたいね」と
誰ともなく言い出し、電気を消して、ろうそくの明かりの中で始まりました。
<面影を>
 演奏と唄を聴いて下さったお母さまは、涙を拭きながら「今朝、とみおさんの夢を見たのよ。はっきり覚えているの、二十八年も前のことなのに・・・。今夜こうして思いがけずこの曲が聴けたのは、私の想いを知っているとみおさんが、貴女を連れてきてくれたのかもしれないわね」とおっしゃいました。そして「とみおさんが傍に居るみたい」とおっしゃって下さいましたが、私もきっとそうだと確信します。
<降りてくるもの>
「明日、店用にススキをいただきに参ります」とお願いしておいとまする頃には、月は薄っすらと雲をかぶっていました。
翌日の昼近く、いつものように長いスロープを下りながら「あれっ?琴弾いたのは、いつだっけ?」と思ったんです。もう何年も前にあった遠い過去の出来事のような気がして。私の心の中に、薄明かりのお部屋の情景がそのまま、切り取られた絵のように鮮明に残っているのに、それが昨夜のことだったということが信じられない気持ちでした。その事をお母様にお話しすると、自分も同じだとおっしゃいました。
きっとそれは二度とない、その時と場に降りてきたものが織りなした世界だったのかもしれないと、ふたりで納得し合いました。



  
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たけやだよりVOL.26  その2

<月明かりの中で>
 今年の中秋の名月、ご覧になりましたか?素晴らしい輝きでしたねえ。お帰りになるお客様に「お月様を見ながら帰ってくださいね」と声をかけずにはいられない程の神々しさでした。
 深夜、吟醸亭の畳に寝転がって月を眺めていますと、やっぱり、この変わらない月を見ていたであろう亡き人々を思ってしまうのです。父母も、兄たちも・・・そして・・・
<小野小町>
 翌日も良いお天気で、しかも天気予報に★マークが付いているのを確認し、友人としめし合わせて、友人のお母様のところで「小さなお月見コンサート?」を決行しました。
お母様はいつも、亡きご主人のことを「とみおさん」と優しく呼ばれ、今でも逢いたい、逢いたいと思っておられる方です。

昨年の秋、琴仲間から教えてもらった「うたた寝に」という曲を弾いたとき、すぐに「これをお母さまに聴いてもらいたい」と思いました。
小野小町の和歌に曲をつけて、弾き唄うのですが、とっても素敵なんです。
歌詞は 
「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ
夢と知りせば覚めざらましを 
いとせめて恋しき時は うばたまの
夜の衣を 返してぞ着る
うたた寝に恋しき人を見てしより
夢てふものは 頼みそめてき」

訳は
「恋しく思いながら寝入ったので、その人が
現れたのだろうか。夢だと知っていたら目覚
めたくはなかったのに
どうにもならないほど恋しい時は、夜の衣を裏返して寝るのです。
(衣を返して寝ると恋人に夢で逢えるという古い言い伝えがあった)
不意に落ちたうたた寝に、恋しい人を見 たその時から、夢という頼りないはずのものを、頼みに思うようになってしまった。」



  
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たけやだよりVOL.26  その1

<山の彼方の・・・>
 私には息子さんと二人で牛を飼っている親しい友人がいます。初めて彼女の家に行った時の事を今でもはっきりと覚えているのですが、行けども行けどもたどり着かず、道を間違えたかなと思った頃、山の中腹に彼女の姿を見つけた時には「こんなところに住んでたの!」と思わず口に出してしまいました。
今では通いなれた道で、そんなに遠いとも思いませんし、近道も覚えました。
いつもは用が済むとバタバタと失礼していた私も、この日ばかりはゆっくりと牛の様子や、眼下に広がる海と、遠くの黄金色をした田んぼや緑の畑を眺めておりました。
<心静かに>
 牛をじいっと観察していると、牛の中にも人間以上の情愛や、自分と他の牛を区別しているようなしぐさがあり、又、一つのルールのようなものまであるように思えてきました。何よりも牛の静けさを感じましたね。
草を食む牛。尻尾でハエや虫を追いながらも
とても静かなんですね。
又、山にすっぽりと抱かれたような集落の上をゆっくりと舞い飛ぶトンビの姿。私の心までいつしかとても静かになり、其のまま禅定でもしているような感じでした。
とても落ち着き安らいで、まるで山の心とひとつになってゆくような感覚もありました。
ここに長く住む友人は、きっと当り前になっていて、この静けさのかけがえのなさをあまり理解していないのかもしれないなぁとも思いました。私は時々ここに来てぼんやりと坐ってみたいと思っています。
昼間なのに、辺りは虫の声々が冴え響き渡り、俗世と隔離されたような時間を味わわせていただきました。



  
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たけやだよりVOL.25  その6

終わりに

 母の一周忌の前後に頂いた出会いは、とても偶然とは思えないものが少なくありませんでした。
 ある日のお客様のおひとりは、母が亡くなる少し前にお世話になった病院の、事務方として働いておられました。
「その節はお世話になりました」とお礼を言いますと、「覚えています。自宅で看病されるというので、在宅用の酸素の手続きをしたのは私です。幸せなばあちゃんだなって思いました」と言って、涙をぽろぽろ流されるのです。
「自分は事務方なので、大してお役に立てませんでしたが、とても嬉しかったです」と続けられました。
医療の現場で患者さんたちに一番長く接し、その気持ちをよく解っているのはナースだと思います。たけやのお客様にもナースが沢山いらして、その方々からも、母を自宅で看取ったということには、「ご本人が一番喜んでおられますよ」と口々に言って頂きました。
どんなに手を尽くしても、自分の家が一番良いと話される患者さん方に対して、医療関係者としては、出来れば患者さんやご家族にとって、一番良い形で手助けをしたいと願っておられる事がよく分かります。
今の世の中では、様々な意味で難しくなっている自宅介護ですが、皆が幸せになれるよう、一生懸命考えて、心を尽くし、お世話させていただけたら最高ですね。
    それではまたお便りさせて頂きます。



  
B!
  

たけやだよりVOL.25  その5

のんびりゆったりした営業のたけやではありますが、時に人手が欲しいときもありまして、以前は姉に頼んだりしていたのですが、よる年波には勝てず?今のところ温存しています。
ということで、これまで若い女性が手伝ってくれていました。 

 ユキちゃんに始まり、アイチャン、マキチャン、マユミチャン、ヨシコチャン、ナオミチャン。
ところが皆、昼間の仕事が見つかったり、結婚したり。頼みの綱だったナオミちゃんも、とてもよい仕事が見つかって、この春、たけやを卒業して行ってしまいました。
 困ったなぁと思っていたところ、息子が「たきさんはどうだろう」と言うので、たずねてみると「子供に手がかからなくなったから、時々ならいいですよ」という話になりました。
タキチャンは二十年近くも前、たけやが下京町にあった頃、それも花の独身時代に勤めてくれていた女性で、一度も外で働いたことがない私は、タキチャンにいろいろ教えてもらいました。
昨年、母の葬儀で久方ぶりに出会ったタキチャンは、更にダイナミックになり、貫禄充分で、懐の深いお母ちゃんになっていました。

 今、たけやで頑張ってくれているのですが、もうすっかり昔の勘を取り戻し、私も安心しています。このおたよりを読んでくださって、「あのたきさん?」と顔を思い浮かべていらっしゃる方も少なくはないと思いますが、そうですよ
「あの、タキサン」ですよ~。



  
B!
  

たけやだよりVOL.25  その4

カウンターの後ろの壁がギャラリーになっていること、お気づきになりましたか?
私の友人のご主人様が描かれた絵です。彼女も絵描きさんですが、作品が大き過ぎて、たけやには無理なので、風景画を、お願いして飾らせて頂いています。
店主は絵を観るのが大好きで、子供の頃には賞なるものをもらったこともあるようですが、以前、酒蔵巡りをしていた頃、美術館にも足を運んでいたらしく、「今、徳川美術館にいるけど、すごいぞ」などと連絡してきていました。

朝、店に入って「あっ」と思い、「そうだった。昨夜みんなでギャラリー作りを楽しんだんだっけ」と、異なる空間に足を踏み入れたような感覚から、現実に戻りましたが、素敵なギャラリーもそれはもちろん素敵ですが、そこに至るまでのドタバタ劇が楽しかったんですよ。
「ここに堀江先生の絵を飾ったらいいだろうねぇ」などと話をしていたところ、それを耳にされた先生が「持ってくるよ」という話になり、数日後に御自身で取り付けして下さったんです。
親しい友人達が見守る中で(もちろん手伝ったりは出来ないので、全部ご夫妻にお任せ)壁にひとつひとつの絵が納まってゆくと、「オーッ」と歓声が上がり「島瀬美術館よりもいいんじゃない?」などと失礼な発言も。

何でもかんでも皆様に支えられて」という言葉が事実であることは、何と恵まれていることかと思います。たけやだより一つとっても、気軽に投稿して下さる皆様のお陰さまで、今回Vol・25 が出来ました。
そして先日お越しいただいたお客様の、「便りを出せる相手、お客様がいて下さることが宝なんですよ。ありがたいことですね」のお言葉に、「そうだ そうだ」と心の中でうなづく私がおります。
あの方もこの方も「皆さん」という、ひとくくりではなく、おひとりお一人の輪郭がはっきりしています。
「たけやは口コミで広がる出会いを大切にしてゆきたい」と店主が申しますが、それは人から人へと広がる輪の温かさを実感させていただいているからだと思います。
素敵な友人たちに乾杯!



  
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たけやだよりVOL.25  その3

 年に二度くらい、遠く離れた島からご来店くださるご夫婦がいらっしゃいます。独身時代からですから、もうずい分長いお付き合いですね。お客様というより友人という感じでしょうか。 

 海の幸をふんだんに取り入れた食卓の様子、お母様の手作りの保存食がどんなに美味しいかというお話。中でも一番心惹かれるのは、季節の味わい方ですね。この時期には何が美味しいとか、自然の恵み、旬の味に、とっても敏感です。
 朝は茶粥に旬の魚の干物をいただき、夕食にはいそいそと台所に立ち酒の肴を作る。
 共働きのお二人は、互いに助け合いながら暮らしておられる様子がうかがえます。

「実家に泊まった朝は、家中に立ち込める、御飯の炊ける、ふくいくとした匂いで目が覚める」という言葉に、なんて豊かな暮らしぶりこの豊饒の時代に心豊かに暮らすというのは、逆にむづかしくなってきているのを感じます。
欲しい物がすぐ、そして、昔よりも安価に手に入りやすい今の時代は、例えば私の母が若かった頃にはとても考えられないことでしょう。
手をかけなくても美味しいものは手に入りますから、毎日好きな物も食べられますし、現代の女性は家事等の重労働から解放されて、時間をもてあましている人も、ひょっとしたら少なくないかもしれませんね。



  
B!