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たけやだよりVOL.27 その7

<終わりに>
 珍しく大雪が降り積もった朝、新聞で彼女の訃報を知りました。「まさか! だってこの前あんなに元気だったのに・・・」心臓がドクドクいい始めて、何としてもお別れにいきたいと、あわてて準備をして出かけたあの日。
 私の中では病を受け入れ、病と共に生きる彼女が今も生き続けているので「いっそ、お別れになんか行かなけりゃよかった。 
ずっと知らない方がよかった」という思いも出てきたりしています。
華やいだ祭壇の真ん中で、美しい笑顔の彼女はまぶしく素敵でした。私と同い年。ふと、私もやがて、あそこにああして写真を置かれるんだなぁ。あの場所で、参列して下さる方々をお迎えし、お礼を申し上げることになるんだろうなぁと思いました。
すると、「このまま死ぬ訳にはいかない!」という強いが思いが湧いてきました。
<面影に>
 久し振りのバス。身を切るような冷たい風。いつもはぬくぬくとしたマイカーを足に駆け回っている為、バス停に待つ人々の寒さには思い及ばず、
八十、九十になっても、「出来るだけ自分の事は自分で」を貫いた母をふと思います。
こんな寒い日も、短歌教室に通い、墨絵に通い、ひとり病にある友人を見舞う時、母はいつもバスを利用しました。
ああ、こんなに寒いのに・・・。一緒に並んでバスを待つ見知らぬ人にも、何かしら近親間を覚えた一日でした。

 先日、とっても疲れ、くたびれてしまって、「何もかも投げ出してどっかに行ってしまいたい」と捨てばちに思った時、ふっと、母の姿が浮かびました。
思えば母は強かったなぁ、あんなに高齢で病気だったのに、よく動き働き、人に尽くした人生だったなぁ・・・。
すると力が湧いてきて「ちょっと疲れただけだった」などと自分をいたわりつつ励まして、また、歩きだせました。
一生懸命生きている人の姿というのは、どんな時も人の励みになるんですね。「自分なんて誰の役にも立ってない」なんて思うことがありますが、
それは違うかなと思うようになりました。
この辛い事の多い世界で、人間が生きているというだけで、ただそれだけで良いし、尊いことなんだと思います。
それに自分の知らないところで誰かの元気の素になっているかもしれませんよ。
生かされている今を大切にしたいと改めて思います。

<また逢おうね>
 彼女の死を悼み、たくさんの人が悲しみ、涙し、お棺の彼女を花でいっぱいに満たし送り出します。
「これから『一日一生』の心で生きていくね。またね。また逢おうね」花の中で笑っているような美しい顔に約束しました。



  
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