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たけやだよりVOL.27  その3

<着物>
 大先輩のお寿司屋さんのママから『女将さんにはちょっと地味だけど、良かったら着て欲しいんですけど』(ママはこんな若輩者の私のことを「おかみさん」と呼んでくださいます)という伝言を店主から聞いて、いそいそと出かけて行きました。
大切にタトウ紙に納められた着物たち。
ぱらりとはらって出てきた紬の何と粋なこと! 「私好みです!」と大声で叫んでしまいました。ちっとも地味じゃないし、とっても素敵。次から次に箪笥から出てくる着物はまるで呉服屋さんの店先に居るようで、私を興奮させるに充分でした。見せてもらうだけで結構です」って言いながら、品の良い着物の山に埋もれていることの幸せ。洋服ももちろん素敵ですけどね、着物って魔力がありますよ。日本人の血でしょうか。とりこになりますねぇ。
<もんぺ?>
 「昔ねぇ、大広間に呉服屋さんが来て、反物を次から次に広げていくのよ。それをみんなで、ああでもない、こうでもないって言いながら選んで・・・」そう言われるママの言葉に、時代劇で見たことのある、その場の様子が目に浮かんできました。半襟や帯まで戴いての帰り際に「これもあったから使って」と渡されたのは、かすりの「もんぺ」でした。
「えーっ! 私にもんぺをはけって言われるんですかあ?」とすっとんきょうな声を上げた私を、「なに言ってんの、私なんて雨の日にもんぺはいて、長靴で買い物に出かけていたんだから」と、一蹴されました。おまけにご主人に「おとうちゃん、おかみさんたら、もんぺはけないって言うんだから」とおっしゃり、またその大将も「もんぺはいて水筒を肩からぶらさげたら、よう似合うと思うよ」とひやかされました。
<機能的>
 お正月、着物でもきちんと着て気分を新たに・・・などと張り切っていたのですが、周りを見れば、暮れの片付かないものがゴロゴロして、心は「あ~あ」
と、そこで、例のもんぺをはいてみよう。
私はママから教わったように、着物をからげてもんぺをはいてみました。とても不恰好でしたが動きやすい! とにかく機能的でした。ところがトイレに行こうとすると、もたもたして~。
 そのことを再びママにお話しすると、「おかみさん、ショーツつけてるでしょ。あんなもの、つけない癖をつけなくちゃ」「おじぎをした時に、線が見えたんじゃ着物が台無しだわよ」
<時を彩る>
 大先輩に色んな事を教えていただくうちに本当に着物が好きになりました。毎日着ていると、着付けのうまい下手以上に、馴染んでくるのがわかりますし、紬などは着れば着るほど、つやと味が出てくるそうですから、どんどん着させてもらおうと思っています。
 いただいた着物の中で、ママが二十歳の頃に作ってもらったという一枚は、私のお気に入りになりました。しっとりして、とても着やすく、これが五十年も前のものかと思うと、不思議な気がします。やがて次にこの着物に袖を通す人が現れたら、また新たな呼吸をしながらその時代を共に彩ってくれることでしょう。
何代にもわたって語り継がれる布物語に憧れます。
着物はやっぱり着てこそ、そのいのちが輝くんですよね。



  
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