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たけやだより vol.47 その1

《優しさに包まれて》
どこからともなく甘い香りが届きます。
もうキンモクセイが咲いているのかしら?と思い、周りを探してみますと、オレンジ色の小さな花々がそこに在りました。
あんまりひっそり佇んでいるので気づかなかったのですが、いつから咲いていたんでしょう。
我が家にある小さな木は、少しだけ手を横に広げたような、おしるしだけのささやかな香りを届けてくれる、
か細い存在です。でも、強い香りに惹かれてたどってゆくと、ありました。お隣の大木。
 昨年、うんと切って、痛々しい姿だったのに、なんと! 豊かなまんまるのボールのような形をして咲いていました。
強いですねぇ。
「この香りを家の中に連れて帰りたい!」と思ってしまった私は、お願いして小枝を頂きました。
家の内・外に香りが充満して、なんとも夢心地。
 朝、この豊かな香りの中で目覚めて、
お弁当作りのために店に行くと、やはり
心地よい香りが迎えてくれます。
 でも、お酒の席には残念ながら置けません。だって、お酒の香りが分からなくなってしまいますから。
米には米の香りがあるのですが、それは
とってもデリケートです。
 とにもかくにもこの幸せに、もうしばらくは浸っていられる! 最高です。
 秋の香りに魅かれ、家の周りをブラブラと歩いてみれば、芙蓉は種を育み、椿は蕾を膨らませ冬の準備です。
いよいよ出番。
 素晴らしい模様を光に透かして見ると、蜘蛛の芸術家の作品があちらこちらに
見受けられます。近くによってしげしげと見ても、彼らはあわてる風も無く、じっとしています。
こんなに美しい幾何学模様を、小枝で難なく払い、壊してしまう自分に
罪悪感もあり、「ごめんね」などとつぶやくのですが、「ごめんで済むなら
警察は要らん!」と、
どこかから声が聞こえそうなほど、いくつも
いくつもの蜘蛛の巣を壊しながら歩みを進めてゆくと、やはり
キンモクセイに出会います。
こんな所にもあんな所にも。
 優しい風を運んでくる秋の日に、こんな香りに包まれ、静かなひと時を過ごせるなんて本当に幸せです。



  
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